東京高等裁判所 平成2年(行ケ)280号 判決 1992年2月27日
メキシコ国 メキシコ市 四、デー・エフ・スリバン 五一
原告
ソウサ テスココ
ソシエダ アノニモ
右代表者
イサック エル シラー
ウベルト デュラン
シャステル
右訴訟代理人弁理士
松田喬
東京都千代田区霞が関三丁目四番三号
被告
特許庁長官
深沢亘
右指定代理人
後藤晴男
同
宮崎勝義
同
廣田米男
同
有阪正昭
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
この判決に対する上告のための付加期間を九〇日と定める。
事実
第一 当事者が求めた裁判
一 原告
「特許庁が昭和五六年審判第一六八〇一号事件について平成二年六月七日にした審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決
二 被告
主文一、二項と同旨の判決
第二 請求の原因
一 特許庁における手続の経緯
原告は、指定商品を第三二類「加工藻類および他の加工食料品その他本類に属する商品」(昭和五六年二月七日付け手続補正書で「スピルリナプラテンシスの精製粉末を含有する加工藻類および他の加工食料品その他本類に属する商品」と補正)とし、「スピルリナプラテンシス」の文字を横書きしてなる商標(以下「本願商標」という。)について、昭和五二年八月一二日、登録出願したところ、同五六年三月二五日拒絶査定を受けたので、同年八月七日審判請求をした。特許庁は右請求を同年審判第一六八〇一号事件として審理した結果、平成二年六月七日、右請求は成り立たない、とする審決をした。
二 審決の理由の要点
本願商標は「スピルリナプラテンシス」の文字を横書きしてなり、指定商品について前項記載の補正経緯を経て、昭和五六年二月七日付け手続補正書で「スピルリナプラテンシスの精製粉末を含有する加工藻類および他の加工食料品その他本類に属する商品」と補正されたものである。
そこで、判断するに、近時、「スピルリナ」の語は、藍藻の一種で、毒性がなく、食用に加工したものは蛋白価が高く、各種ビタミン類やミネラルなどの栄養成分が豊富であって、いわゆる健康食品や自然食品と呼ばれる商品に利用され、病気の治療や予防にも役立つものとして期待され、注目されて、一般にもよく知られているものと認められる。
本願商標は「スピルリナプラテンシス」の文字を横書きしてなるものであるところ、いくつかあるスピルリナの種類のうちの一種を表したものと常に理解されるものとはいえないとしても、前記のような事情が存することからすると、本願商標について「スピルリナ」と「プラテンシス」の二語からなるものと理解される場合が少なくないとみるのが相当である。
そして、補正後の指定商品の表示は必ずしも「スピルリナプラテンシスの精製粉末を含有する商品」のみに限定されたものとは認めがたく、結局、第三二類に属する商品全部を指定したとみられるものである。
してみると、本願商標を指定商品中の加工藻類その他の加工食料品について使用した場合、本願商標構成中の「スピルリナ」の部分は、商品の品質すなわち「スピルリナ」を加工ないし含有する品質を有する商品であることを容易に理解させるにとどまるものとみるのが相当である。
そうすると、本願商標は、指定商品中の「スピルリナ」を含有しない加工藻類その他の加工食料品について使用するときには、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがある。
したがって、本願商標は商標法四条一項一六号に該当するから、登録することができない。
三 審決の取消事由
審決の理由の要点のうち、本願商標の構成、指定商品の表示並びにその補正の経緯及び内容については認めるが、その余は争う。審決は、以下に述べるように、前提事実を誤認するなどして誤った結論を導いたものであるから、違法であり、取消しを免れない。
審決は、スピルリナは毒性がないと認定しているが、右認定は事実の誤認である。すなわち、スピルリナは、かって飢饉の際に土着の些少の人間が食用に供した程度の事実はあるとしても、これを肉眼で見知することはできず、そのまま食用に供したときには、植物性アルカロイドが強烈であるため食用不可能な弊害を有するものであるから、毒物性というべきものである。そして、スピルリナは、外見上濃緑水であり、原告が不要物である植物アルカロイドを抽出可能とするに至って始めて企業対象たるの基礎が築かれたものであり、スピルリナなる名称は、原告がリンネの学名法を参考にして名付けたものであって、決して一般的に使用されているというものではなく、我が国においては全く未知の名称である。しかも、スピルリナ藻類から夾雑物を除去して精製物を構成することは、一大難事であるところ、原告において、メキシコ特許を使用し、スピルリナ藻類を濾過し、真空処理して前記夾雑物を除去した対象を水洗、乾燥、加熱、粉末にした精製物を構成したものであり、スピルリナ藻類の精製粉末である商品は、スピルリナ藻類を遠く脱報した商品であり、両者は全く異なる物である。したがって、審決の前記認定は、商標取引上の社会的事実、経済的取引事実に徴して、全く存在していない空のものに惰しているものである。また、審決時において、商標を付する対象商品は存在しないのであるから、商標法四条一項一六号に該当するものではない。以上のように、審決は、スピルリナ藻類という対象を知らずして判断をしているものであるから、その判断が誤っていることは明らかである。
また、審決は、本件指定商品は必ずしもスピルリナプラテンシスの精製粉末を含有する商品のみに限定されたものとは認めがたく、第三二類に属する商品全部を指定したものとみられるとしているが、右判断は誤っている。すなわち、本件指定商品の表示においては「スピルリナプラテンシスの精製粉末を含有する」なる表現が用いられているところ、右の「含有する」との語は英語における他動詞に準じて他の用語に結合し、「スピルリナプラテンシス」精製粉末に付いて述語的な表示を構成している。そして、本件指定商品の「加工藻類および他の加工食料品その他本類に属する商品」なる目的語的表示に句読点がないばかりでなく、右目的語的表示のそれぞれが体言止め的表示をしていないことからすると、前記「含有する」は、それ以下の指定商品の表示たる体言に全部結合するものである。したがって、第三二類の指定商品を単に羅列した場合とは解釈上全く異なる対象を形成しているものであるから、この点においても審決の判断は誤っている。さりに、「スピルリナ」と「スピルリナプラテンシス」は、全く対象を異にするものであるから、これを区別しない審決の判断は誤っている。すなわち、前者は藻類相互間の区別の場合に使用するのに対し、後者はそれにより特有の個性を表現する場合の名称観念であり、両者は全く代替性を有していない。したがって、「スピルリナプラテンシス」と横書きしてなる本願商標を「スピルリナ」と「プラテンシス」に分解し、本願商標は「スピルリナ」に帰するとした審決の判断は根底的な誤りを犯しているものである。
以上のように、審決の認定判断が誤っていることは明らかであるから、違法であり、取消しを免れない。
第三 請求の原因に対する認否
請求の原因一及び二は認めるが、同三は争う。審決の認定判断は正当であり、違法とする点はない。
原告は、本件指定商品についての「スピルリナプラテンシスの精製粉末を含有する」は、それ以下の指定商品の表示たる体言に全部結合すると主張する。しかしながら、本件指定商品に関する定め中にある「および」は、「スピルリナプラテンシスの精製粉末を含有する加工藻類」と「他の加工食料品」とを並列に接続している語であって、しかも、商標法施行令で定める商品区分第三二類の見出しには「加工食料品」の表示はあるものの「他の加工食料品」の表示はないのであるから、文脈上、本願商標の指定商品として表示されている「他の加工食料品」とは、「スピルリナプラテンシスの精製粉末を含有する加工藻類を除く加工食料品」を意味するものと解さざるを得ない。また、「その他本類に属する商品」の表示は、特許庁における実務上の便宜のためのものであって、該表示の前に記載される具体的商品以外の商品で当該類に属する商品全部を指定する場合に用いられるものであるから、本件の場合においても、「スピルリナプラテンシスの精製粉末を含有する加工藻類および他の加工食料品」以外の商品で、商品区分第三二類に属するすべての商品を指称するものと解すべきである。
したがって、原告の前記主張は失当である。
第四 証拠
証拠関係は、書証目録記載のとおりである。
理由
一 請求の原因一及び二の事実は当事者間に争いがない。
二 審決の取消事由について
1 スピルリナ藻について
いずれも成立に争いのない乙第一号証(昭和五三年七月五日付け「日本経済新聞」)、同第二号証(前同日付け「日刊工業新聞」)、同第三号証(昭和五四年二月六日付け「日本経済新聞」)、同第四号証(同年一〇月八日付け「毎日新聞」)、同第五号証(山口迪夫「スピルリナの利用における課題」、昭和五四年二月一日株式会社食品資材研究会発行「New Food Industry」第二一巻二号三四頁)、同第六号証(「週刊朝日」一九八八年一二月二日号)、同第七号証(昭和五九年一一月一八日付け「日刊スポーツ」)、同第八号証(昭和六〇年七月二八日付け「スポーツニッポン」)、同第九号証(昭和六〇年八月二三日付け「日刊スポーツ」)、同第一〇号証(昭和六〇年八月二五日付け「スポーツニッポン」)、同第一一号証(一九七〇年発行中村浩著「ラセン藻の開発」)、同第一二号証(田辺洋介「新しい天然物スピルリナの将来性」、株式会社食品と科学社発行「食品と化学」一九八〇年四月号一〇〇頁)、同第一三ないし一五号証(ラリー・スウィッツアー「未来派食品スピルリナ」(1)ないし(3)、一九八三年ユニバース出版社発行「Cosmo」五ないし七月号)、同第一六号証(菊池茂「スピルリナ」、昭和五九年株式会社食品資材研究会発行「「New Food Industry」第二六巻四号一二頁)、同第一七、一八号証(島松秀典「微細食用藻スピルリナの量産」(上)、(下)、一九八六年発行「BIO INDUSTRY」第三巻五、六号)、同第一九号証(河口宏太郎「微細藻類の日常食品としての利用」、昭和六一年六月一日発行「食品と開発」二一巻六号三七頁)によれば、以下の事実が認められ、他にこれを左右する証拠はない。
すなわち、スピルリナは藍藻類、紐子目、ユレモ属、スピルリナ科に属する体長二〇〇ないし五〇〇ミクロンのらせん状をした微生物であり、現在までに約三〇種類が確認されているが、このうち工業的に量産が可能なものとしては大型のSpirulina platensis、Spirulina maxima等の数種類に限られている。スピルリナは、エチオピア、チャド、メキシコ等の熱帯地方の塩湖に自生し、古来からメキシコ、チャド等においては、原住民の食用に供されてきたものであるところ、スピルリナは蛋白質の含有量が極めて高く、しかも良質であることから、一九五〇年代から、将来の有力な蛋白源として注目を集めるに至っていたところ、一九六七(昭和四二)年、スウェーデンのヘーデン博士がスピルリナの食糧化を発表して注目を集めた。そして、スピルリナの安全性については、フランスや我が国においても繰り返し試験され、その安全であることが確認されてきた(なお、乙第五号証には、スピルリナは「・・・品質ならびに衛生上の見地から必ずしも食品に適しているとはいえない。」との記載があるが、右の箇所は「天然培養池の製品」、すなわち、「天然培養池」のスピルリナに関するもので、かかる「天然培養池」のスピルリナは、「どうしても夾雑物の混入する割合が高くな」る(三九頁右欄一三行ないし一五行)ために、前記のような問題点が生ずることを指摘したものであるから、何らスピルリナ自体の安全性を否定する根拠となるものでないことは明らかである。)。その上、スピルリナは量産化が容易であることから、フランス国立石油研究所では石油精製過程の副産物である二酸化炭素を利用してスピルリナを培養する方法による工業化の研究を開始するなどその研究が進められ、一九七〇年代初頭に右研究所と原告会社との共同事業としてメキシコでパイロットプラントが建設され、また、昭和四九年から同五〇年にかけて、大日本インキ化学工業株式会社がクウェート沿岸の砂漠でスピルリナの人工培養事業に着手し、昭和五二年には、場所をタイ国に移し、昭和五三年から年産一〇〇トン規模の本格的生産事業を行うなどして、次第に生産量が増えていった。また、スピルリナは蛋白質の他、ビタミンB、ビタミンE、鉄、ミネラル等を含むことから、健康食品、自然食品としてもその将来性が注目されていた。
我が国においては、一九七〇年代初めに、スピルリナに含まれるカロチノイド色素が錦鯉の色揚げに有効であるとして、錦鯉の餌の原料として使用され、また、昭和五〇年始めころから健康食品、自然食品として、クロレラと同様の緑色の粒状品として販売され始め、折からの健康食品ブームの中で、糖尿病、肝臓病等に効果的な栄養食品であるなどとして、昭和五二年のクロレラの皮膚炎事件等を契機としながら次第に販売量を伸ばしたほか、食品添加物等としても利用の度合いを高め、スピルリナ商品の売上高は、昭和六〇年において七〇億円に達している。
以上の認定事実によれば、我が国においては、本願出願当時の昭和五二年においても、既にスピルリナは、高蛋白質食品ないしは各種ビタミン等を含んだ健康食品、自然食品として注目を浴びていた他、錦鯉の色揚げに効果を有する飼料としても使用されていたものであり、かかる認識はその後の健康食品ブームと相まって、食品添加物等へと利用分野を拡大しながら、一層浸透し、審決時においては、相当広く浸透し、定着していた事実が窺われるところであるというべきである。
2 本願商標について
ところで、本願商標は、第三二類の「スピルリナプラテンシスの精製粉末を含有する加工藻類および他の加工食料品その他本類に属する商品」を指定商品とするものであるところ、右第三二類は、「食肉、卵、食用水産物、野菜、果実、加工食料品(他の類に属するものを除く。)」を対象商品とするものであるから、本願商標に係る前記指定商品の定めによれば、本願商標はスピルリナプラテンシス藻を含む食品の他、これを含まない第三二類の全ての商品を指定商品とすることは、後述するとおり、疑問の余地のないところといわなければならない。そして、本願商標はその構成からみて、スピルリナプラテンシスと称呼されるが、プラテンシスの語(前掲乙第五号証、同第一一号証、同第一七号証等によれば、「プラテンシス」はメキシコ原産のスピルリナ藻類の代表的な一種類の名前であることが認められる。)が、特定の観念を直ちに想起せしめる程一般に認識されている言葉ではない(かかる証拠は本件全証拠を検討しても見出し難い。)のに比し、前半のスピルリナの語は、指定商品が食品であることと相まって、前述したような、健康食品等として認識の広まっているスピルリナを意味していることから、本願商標の付せられた商品に接する者に対して、スピルリナを含有するか、あるいは少なくともこれに何らかの関連を有する食品であることを想起せしめるものというべきである。
そうすると、スピルリナの語の前記のような一般的な理解のされ方からすると、本願商標は、その指定商品のうち、スピルリナプラテンシス藻に関係のない指定商品に使用された場合、当該商品の品質について誤認を生ぜしめるおそれがあることは明らかであるというべきである。
3 原告主張の違法事由について
原告は、スピルリナは、植物性アルカロイドが強烈であるため食用不可能な弊害を有するものであるから、毒物性というべきものであると主張するが、かかる原告主張を裏付ける証拠はなく、かえって、前掲各証拠(例えば、前掲乙第五号証三九頁右欄二〇行ないし二四行、同第一六号証左欄下から一行ないし右欄八行、同第一七号証二八頁右欄一二行ないし一六行等)によれば、スピルリナの安全性が確認されていることは既に認定したとおりであるから、右主張は採用できない。
原告は、原告会社がメキシコ特許を使用して始めて、スピルリナの企業対象たるの基礎が築かれたものであり、スピルリナなる名称も、原告がリンネの学名法を参考にして名付けたものであって、我が国においては全く未知の名称であり、本願商標に係る指定商品は将来の開発を期した想定上のものであるなどとして、審決の前記認定は、商標取引上の社会的事実、経済的取引事実に徴して、全く存在していない空のものに惰しているものであり、また、審決時において、商標を付する対象商品は存在しないのであるから、商標法四条一項一六号に該当するものではないと主張する。
そこで検討するに、スピルリナの商品化への研究開発の経緯はさておき、既に前項において認定したように、本願商標の出願当時においても、スピルリナの語が、健康に有用な食品を表すものとして理解されていたものが、その後益々かかる理解は一般に浸透し、審決時においては相当程度に達していたものと認められるから、スピルリナの名称が我が国においては全く未知の名称であったといえないことは明らかであるし、仮に本願商標に係る指定商品に想定上のものが含まれていたからといって、また、スピルリナを含有する製品化された商品がスピルリナそれ自体と全く異なる形態であったとしても、スピルリナが前記のような性質を有する藻類の一種として理解されている以上、これを含有しない商品に本願商標が付された場合、品質の誤認を生ずることにかわりはないから、右主張も採用できない。
また、原告は、本件指定商品は、「スピルリナプラテンシスの精製粉末を含有する」なる表示は指定商品の全部に係るものであるとして、審決が本件指定商品は第三二類に属する商品全部を指定したとみられるとした点を非難する。そこでこの点について検討するに、本願商標に係る指定商品の定めが「スピルリナプラテンシスの精製粉末を含有する加工藻類および他の加工食料品その他本類に属する商品」であることは前記のとおり当事者間に争いがなく、一般に「および」は先行の語と後行の語が並列の関係にあることを意味する語であることからすると、「スピルリナプラテンシスの精製粉末を含有する」との句は、「他の加工食料品」を修飾するものと解するのが相当というべきであり、これに続く「その他本類に属する商品」をも修飾していると解することは困難というべきである。仮に、もし原告が主張するとおりの趣旨の指定であるとするならば、結局、本件指定商品は「スピルリナプラテンシスの精製粉末を含有する第三二類の全ての商品」を意味することとなるが、かかる場合においては、本件指定商品の表示における「加工藻類および他の加工食料品」との表現部分は第三二類に属する商品の一部であることからすると、全く無意味な表現となるものであるから、かかる表現は極めて不自然な用法というべきであって、到底首肯し得るものではない。原告の主張は独自の主張であり採用できない。
さらに原告は、「スピルリナ」と「スピルリナプラテンシス」は、全く対象を異にするものであるとして、審決の判断を非難するのでこの点について検討するに、前認定のとおり、厳密にみた場合両者が異なる概念であることは、原告の指摘するとおりであるが、本件訴訟において問題となるのは、本願商標がスピルリナを含有しない指定商品に付された場合、相当程度一般に浸透している「スピルリナ」の語から、一般人が当該商品の品質についてスピルリナを含むもの、ないしはこれに関係する商品として、その品質に誤認を生ずるおそれがあるとした審決の判断の適否であるところ、かかる観点からみると、両者が厳密にみた場合異なる概念を有するとしても、「プラテンシス」の語が「スピルリナ」科の中の一種類を表すものである以上、全体が認識された場合においても、また、前記のように一般に浸透している「スピルリナ」の語に着目された場合のいずれにおいても、前記のような誤認を生ずるおそれがあることは十分に肯認されるところといわなければならない。したがって、原告のこの点に関する主張も採用できない。
以上の次第であるから、原告の主張はいずれも採用できず、審決には原告指摘の取消事由はない。
三 よって、本訴請求を棄却することとし、訴訟費用の負担及び付加期間の定めについて、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、一五八条二項を各適用して主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 松野嘉貞 裁判官 田中信義 裁判官 杉本正樹)